里山コモンズとは?


八方塞がりの中私たちは地権者の事業を有利に運びつつ自然も多く残せる方法はないか?
資金不足の中で、保全のための資金を出す方法はないだろうか?と考え始めました。

◎市民提案の結果行き着いた里山コモンズ案

 私たちは必死で南山の自然を最大限残すための提案を模索し、さまざまな手法を考えました。一戸建て住宅を一部集合住宅にして余った土地を里山にすること、崖下だけを開発してその利益で崖上を保全すること、区画整理を縮小し、農地を市民農園にして税金の支払いに当てること、今流行りの地下マンションで崖を防御し崖から上は残すこと、風力発電をつくり地権者の利益にすること、地域を有料自然公園とすることなど、緑地保全のための資金を得ることを念頭におきながらの作業でした。
 それらをもとに一人の建築家に相談しました。そこで生まれたのが「里山コモンズ案」の原型です。開発の中で里山つき住宅を売り、里山部分は区分けせずに大きなままで残します。里山を負担してくれた人々には里山のある豊かな暮らしを提供します。それが里山コモンズ案の原型です。


◎里山の活用が里山を守ることにつながる

 里山コモンズ案の思想は里山保全の大切なものを包括しているように思われました。
 まちづくりの中で、里山と言う市民共通の資源を中心にすえること、それがこれからのまちづくりには必要だという考えです。里山はただ見ているだけでは残せない自然です。管理し、活用し、人々の生活に必要なものになることが本当に里山を保全することになるのです。里山コモンズには私たちの学んできたこと諸々が生かされていました。


◎開発の中で里山を残すことを選択

 「里山コモンズ案」に出会って、私たちは開発の中で里山を残すことを選択しました。たとえ今、反対運動で現在の開発計画が中断されても、地権者の事情や崖問題が解決されない限り何度も開発計画が起こるでしょう。そしてまた私たちが進んできたような、自然保護から出発し、まちづくりの中できちんと保全するための道にたどりつくのではないでしょうか。
 それならば開発が本決まりになっている今私たちは、開発計画の中で最大の保全を進める道を選ぶべきだと考えました。里山を特色にした事業が成功することで、自然を残したい市民と土地活用を目指す地権者双方の願いが実現すると考えたのです。大きな面積の開発では一定の面積の公園を残すことが義務付けられています。出来ればそれ以上の面積の里山を残し、資金の不足を補いながら、市民も責任を持つ道として「開発の中で里山を残す方法」を選んだのです。


◎専門家との勉強会で辿り着いたさまざまな里山コモンズ

 昨年1年間、組合理事の方々の参加のもと、守る会と日本不動産学会環境資産形成研究会で「南山の環境資産形成を考える勉強会」を行いました。その結果、里山コモンズは新しい故にその実現には多くの課題があることを知りました。また、私たち市民も提案するだけでなく里山保全の一端を担う責任ある活動を行うことが必要であると考え始めました。
 里山コモンズ案の原型は新住民に里山付住宅購入を期待するものでしたが、それだけでなく、市民が資金を出し合って里山を買うことや、小さな街区ごとに住民が里山保全を実現するのも里山コモンズの一つの形ではないか、また農地も里山を構成する最も大切な部分ですから農地の保全活用を市民と農業者が一緒になって実現することも里山コモンズの一つと考えられると思います。
 里山コモンズには多様な形があって地域や新旧を越えた大勢の市民が参加することが大切であり、「里山コモンズ」は場所と仲間、そして仕組みがあって成り立つものだという事を学んだのです。


◎組合との協議

 最後になりましたが、私たちは活動に当たって一つの思いを持ってきました。それは活動の中で調査、学習提案、協議を重視することです。まず南山を歩くこと、生物を知ること、それが基本だと思います。次には市民も学習してきちんとした意見が言えるようになることです。これまでも大勢の専門家との勉強会を行いながら進んできました。最後に話し合うことで、利害の異なる二者でも理解し調整することを心がけました。
 里山コモンズ案は現在組合と交渉中です。実現の道のりは遠く険しいものです。なかなか実現しない現状に内外からの多くの批判も多く在ると思いますが、少しでもわたしたちの姿勢を知っていただければ幸いです。