南山について

 
 
@南山の抱える問題と開発
 A里山保全方法の模索
 B南山ってどこ?


里山保全方法の模索


南山の自然を守る会では南山の自然を残して欲しいと訴えると同時に、地権者の発表した計画に代わる、里山を保全できる提案を必死で模索してきました。その結果たどりついたのが「里山コモンズ」案です。何故そこに行き着いたのかの説明をしましょう。


◎考えられるさまざまな里山保全手法〜保全地域指定や都市公園指定

 まず思い浮かぶのは保全地域指定です。平成13年に里山保全地域と森林環境保全地区が追加されて現在都には5種類の保全地域があります。南山が該当する可能性があるのは「里山保全地域」と「緑地保全地域」ですが、平成13年の里山保全地域候補調査時に稲城市では市内の緑地のどこも候補地として挙げていませんでした。それは既に開発計画が立てられていたからでしょう。

 東京都の保全地域は現在43地区ありますが、経済的理由で年々指定数が減り予算も減少しています。都はこれまで指定した地域の買取だけでも手一杯という事でした。私たちも長い間指定を検討して欲しいと願っていましたが、基本的に指定は地権者の合意と市民の理解が絶対条件です。その意味で区画整理計画の立てられている地域は基本的にはずされる可能性が大きいのです。

 また都市公園指定も先の先まで予定が立てられていて南山では奥畑谷戸公園が既に候補に挙げられており、新たな指定は困難であることが分かりました。


◎その他の手法〜市街化調整区域への逆線引きや市民緑地制度など

 5年に一度都市計画区域の見直しがありますが市街化調整区域への逆線引きはやはり地権者の合意が必要です。市民緑地制度は地権者の土地を市民が管理し、地権者の税金を減免するものです。この制度は是非活用して欲しいのですが地権者の一致が難しい広範囲の里山では難しいのです。その他、保安林指定や生産緑地指定など考えうるさまざまな方法を検討してきました。


◎自然を守るには資金と市民合意ときちんとした行政計画が不可欠

 さまざまな検討の中で知ったのは自然を守るためには資金と地権者の合意とさらに、きちんとした行政の計画が必要であると言う事です。私たち一般市民は自然は好きだが南山に直接税金を払っていないし、里山の管理作業をしているわけではありません。ただ開発に反対するだけでは里山は残すことは困難です。きちんとした行政計画に乗るような里山保全策を考えたいと私たちは学習活動に一層真剣に取り組み始めました。


◎各地の区画整理破綻

 学習会では各地の区画整理の実態も学びましたが、現在、経済の右肩下がりの状況で各地で区画整理事業が破綻しています。南山でも地権者が7割近くの減歩を払って事業を行うことが分かっています。また現在生産緑地で真面目に農業を続けている方も減歩を払うことが決まっていて、決して地権者に有利な開発であるとは思いません。私たちも南山がこのまま残って欲しいと言う思いで一杯ですが、では開発が中止された場合、果たしてこれまでの自然が残るかどうかは疑問です。開発しやすい箇所から乱開発(スプロール化)が始まり、里山は荒廃し、地権者は苦境に立たされる方もいるでしょう。行くも戻るも困難な事業です。

 現在の南山はたまたま奇跡的に残された自然ですが、未来永劫に残る保障はないのです。一方、地権者の方々は減歩という形で土地を出し合い、それを売ることで事業費や法律で決められた公園や道路などの公共用地を捻出します。開発によって、未来永劫に残る緑地が確保されることも事実です。小規模な乱開発が進んだ場合、このような法律の縛りがないため、緑地が全く残されない場合も大いにあります。


◎南山事業への補助金

 南山開発には稲城市税20億と都の税金約47億が投入されます。これまで市街地の区画整理事業へ補助金が出されていましたが、それが南山にも適用されることになりました。補助金の投入は約3年前に稲城市議会の担当委員会で決定されました。守る会ではその時点で議員さんらに里山コモンズ案を説明し、補助金の投入にあたっては里山を重視して欲しいと要望しました。もしその時点で、市税投入と引き換えにより多くの里山保全を条件付けるなどしたら、今の状況は変わっていたかもしれないと残念に思います。